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2011年1月 9日 (日)

The Seven Sisters

セブン・シスターズ―不死身の国際石油資本

アンソニ・サンプソン :著, 日本経済新聞社 (1976) Catk1dx1

読後感:☆☆

セブン・シスターズとは何か。アングロ・サクソン系7大石油資本のことである。

本書は、米系5社(Esso,Mobil,TEXACO,Chevron,Gulf)と英系2社(SHELL,BP)からなるこの巨大資本が、如何にして産油国と自国の政府と、そして消費者との圧力や批判をかわしつつ、黒い液体の支配者たらんと競争してきたかを、一方の側に偏ることなく書き記している読み応え十分の書である。

もっとも、本書は石油危機が起った当時の背景を下に執筆されているため、情報としてはすでに古い。

ただ、この黒い液体が歴史に登場してからどれ程の人間を魅惑させてきたかが分かる、いうなれば人間劇として楽しめる読物である。

特にロックフェラーの商魂の凄さは際立っている。この一族は兎角陰謀論の標的になり易いのだが、その理由は競争相手を出し抜く無慈悲さと秘密主義にあるようだ。

一代でスタンダード・オイルという巨大石油資本を設立したジョン・D・ロックフェラーは、当時の石油パイオニアたちが油田を掘り当てるという“ヤマ師的冒険主義”に浪漫を感じていた時、すでに『この産業を支配する唯一の方法が石油を生産する部門にはなく、石油を精製、販売し、ライバルを安い輸送費で出し抜くことにあると読んでいた。』(p27,第二章 ロックフェラーの遺産)

彼は鉄道会社を説得し、大量輸送には運賃を割り引くだけでなく、“彼の石油を輸送するときにはリベート(払い戻し)を出すようにさせた。”(同)という。著者はこれについて、“自由企業精神を破壊してしまったのはロックフェラーだったのか、鉄道会社だったのか。”と述べている。いったい彼はどうやって鉄道会社にその条件を呑ませたのか、そこをもっとよく知りたいところだが、本書では“説得した”としか記されていない。

厳格な両親に育てられ数字に魅せられた、この“青年”ジョン・D・ロックフェラーの人間性を示している言葉がある。

アメリカン・ビューティ種の赤バラがその華麗さを誇ることができるのは、そのまわりのつぼみを早めにつんでいるからにほかならない。

情報量は豊富で、しかも読み易い。単なるこの業界の知識の羅列のような書き方ではないのが良い。

それから、あたかも石油資本が国際政治を牛耳っているかのような陰謀論ではなく、むしろ産油国、自国の政府、そして消費者たちの批判と圧力に晒され翻弄されている一面も持つという、この巨大資本たちの違う姿も見られるのが良い。

ただ、同時にそこがこの本の読み方の難しい点でもある。産油国や自国の政府の強さに対して、石油資本たちの弱さが意外であるからである。他で語られる(陰謀論むき出しにしても)彼らの姿と違うため、簡単にどちらを取るとも云えないのである。

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