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2011年2月21日 (月)

大陸漂流

【ニューハンプシャー州の田舎町カタマウント―雪のちらつくある寒い日の午後、修理工のボブ・ドゥーボイズは突然自分の人生に耐えられなくなった。何ひとつ大きなことを成し遂げないままに、この寂れた町で30歳をむかえてしまった。だが、自分にはもっと華々しい未来がひらけていたはずではなかったのか。

ボブは人生のやり直しをかけて全財産をステーションワゴンにつみこむと、妻子をつれて夢のフロリダへと旅立った。

一方そのころ、やはり夢を求めてアメリカへ渡ろうと苦闘している若いハイチ人の女性がいた。アメリカに行きさえすれば、何もかもうまくいく―。そう信じて彼女は、自分の赤ん坊と幼い甥とともにカリブ海へと乗り出していった。

やがてふたりの人生が交鎖したとき、そこには思いもかけぬ運命の罠が…。やみがたい衝動に突き動かされてアメリカン・ドリームを追い求め、人生の意味を模索しつづける男ボブ―その魂の叫びを壮大なスケールと力強い筆致で描ききった、ロード・ノヴェルの最高傑作。】

『大陸漂流』

ラッセル・バンクス:著

単行本: 408ページ

出版社: 早川書房 (1991/10)

CDにジャケ写買いがあるように、オレは結構装丁で本を選ぶことがある。この本もそれ。

オレの好きな辰巳四郎の装幀なのだ。

大藪春彦の小説は、彼の装幀が好きだからあえて文庫本で買っていたくらいなのだ。

11年ぶりくらいで読み返してみた。この読後感は変わらない。

この余韻。

Russell Banks の小説は、どんよりとした空を見ているような気分にさせられる。この感じは「狩猟期」では、より強くなっていたが、小説としてはこの「大陸漂流」の方が心惹かれるものがある。

Haitiから密入国という危険を冒しても、そして北部New Hampshireから人生をやり直すために、二つの人生はFrolidaを目指す。

そこに行けば違う人生があると信じて。

なれた仕事を捨てて、家族と共に南を目指す白人の男と、ただ“生きること”それ自体の過酷さに耐えかねて、北を目指すHaiti人。

先の見えた自分の人生にうんざりした白人の男と、人生を想像することすら困難であろう境遇にあるHaiti人。

家財を詰め込んだ車で広大な大陸を走る白人の男と、持ち物など何も無く、汗と汚物の悪臭漂う船倉で何度も犯されながら海を渡るHaiti人。

共にこの冒険的行為に賭けたのだが、かけ金は明らかに違う。

ある意味白人の方は贅沢な冒険と云えるかもしれない。

Haiti人の方はもっと絶望的だ。絶望を突き抜けた冒険。

これは行間から呻きが聞こえてきそうな、そんな物語である。

Russell Banksの語り口がその気分を高めている。 ときに饒舌になり過ぎるきらいはあるが(この小説ではブードゥーが重要な要素になっている)、詩人的記述とでも云えばよいのだろうか、人物たちの科白にではなく、心象風景と情景描写に重きをおく作風はHugoに似たものを感じる。Hugo程には脱線しないが。

兎に角余韻の残る物語であり、自分にとって決して手放す気にはならない本の一つである。

読後感:☆☆☆

Cagexpj4

 

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