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2011年2月11日 (金)

 不道徳教育

671

ウォルター ブロック/不道徳教育

講談社 (2006/2/3)
販売元:HMVジャパン
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読後感:×

【全米に大論争を巻き起こした超ロングセラー人気作家初の「超訳」でついに日本上陸!!
「自由」とは何か。国家の、企業の奴隷として生き永らえることがあなたの人生か。売春婦、シャブ中、恐喝者、悪徳警察官、闇金融……彼らこそわれわれのヒーロー(!?)だ。ニッポンの閉塞を打ち破る奇想天外リバタリアン・ワールド!
あなたはもっと「自由」に生きていい??】

反社会学講座」と系統は似てるな。本の装丁がおちゃらけているのも、内容の急進性を和らげるためか。

しかしどうもオレは頭が堅いらしい。著者の云わんとしていることは分かるのだが、心からその通り!、と同意できない“なにか”があるのだ。

いい加減なわりに保守的なんだろうな、オレ。

結論から云ってしまうと、著者から云わせれば“国家が最大の悪徳”だということになるらしい。

この辺がどうにも“引っかかる”ところなんだなぁ。 オレにとっては国家を否定する奴は皆、凶惨野朗に見えるんだわw、困ったことに。だから読後感は×1つ。思わず“二ヤリ”とするところも結構あるけどね。

目次見ただけでも笑えるよ、列挙されているものが凄いんだもんね。

『売春婦』

『ポン引き』

『女性差別主義者』

『麻薬密売人』

『シャブ中』

『恐喝者』

『2ちゃんねらー』

『学問の自由を否定する者』

『満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴』

『ダフ屋』

『悪徳警察官』

『ニセ札づくり』

『どケチ』

『親の遺産で暮す馬鹿息子』

『闇金融』

『慈善団体に寄付しない冷血漢』

『土地にしがみつく頑固ジジイ』

『飢饉で大儲けする悪徳商人』

『中国人』

『ホリエモン』

『ポイ捨て』

『環境を保護しない人たち』

『労働基準法を遵守しない経営者』

『幼い子どもをはたらかせる資本家』

これを全部擁護してみせるという本書。 まぁ、これを読んで目が覚めちゃうってほどの感動はなかった。でも、著者から教えを請うというより、著者との対話だと思えばそれなりの益はあるかも。

中にはいくつかは、共感できるものもあるのだがねぇ。たとえば『慈善団体に寄付しない冷血漢』って項目。

これはとくに言い訳する必要もないわな。寄付しないからって冷血漢呼ばわりするか、普通。多分、米国社会にはそういう“ええかっこしい”が多いからなんだろう。結構建前社会な気もするね。

社会的背景は兎も角、慈善というその哲学自体が狂っていると著者は指摘するのである。それは、この哲学の背後にあるのは「完全なる富の平等」への要求であるからだという。ただ、ここで説明されている例は極端な気がしたし、そっちの意味で否定するのかと、オレの思うところとは違っていた。

『環境を保護しない人たち』では、単純に現在利用している資源を保護するよりも、地球資源を搾取し、浪費し、代替品の開発という科学技術の進歩を促す方を指向すべきだということである。

 自由な市場では、資源を使い果たすことは深刻な脅威にならない。資源の欠乏が進めば、それを修正する強い力が自動的にはたらくからだ。

 たとえば、もし木材が供給不足に陥ればその価格は上昇する。その結果、消費者は木材を使わない製品を買うようになるだろうし、メーカーは木材の代替品を積極的に利用するだろう。(p275,自由な市場こそ地球を守る)

『麻薬密売人』『シャブ中』については、他にもその手の本は出てるから、目新しい主張はないね。

麻薬を規制することで、かえって地下経済が肥えるだけだっていう指摘は多い。それに加えてこの著者は、薬の密売人が薬の末端価格を引き下げて、そのことによって「シャブ中」を「救っている」というのであるw

売人が1人増えるたびに薬の末端価格は下落する。逆に「法と秩序を守る警察」の働きによって、薬が手に入りにくくなると末端価格は上昇する。その結果どうなるか。

シャブ中による犯罪は、薬物依存症でない者が手がける犯罪よりもはるかに悲惨な結末を迎えやすい。中毒者でない犯罪者は、盗みをはたらくのにもっともよい時と場所を選ぶことができる。しかし中毒者は、「一発」が必要になったらじっくり考えている余裕などなく、しかもそういうときにかぎってドラッグの副作用で頭が鈍くなっているのである。(p92,シャブ中はなぜ犯罪者となるか)

ドラッグの副作用で頭が鈍くなるってことは認めているわけであるw しかし需要があればそこに目を付ける連中は現れる。そうなると、危険を冒してまで供給しようってのはその手の奴らしかいないわけで、それならば規制を撤廃して、その金を「オモテ」に出したほうが善いということ。

しかし、「シャブ中は生産性を低下させない」で持ち出してきた例には、ピンとこなかった。

 たとえば、あるすばらしい発明によって生産性が二倍に向上したとしよう。人々がこれまでと同じだけはたらけば、当然、GDPも二倍になる。その一方で、人々がこの偉大な発明をこれまでの生活水準を維持するために使い、労働時間を半分(すなわち余暇を二倍)にしたならば、GDPは変わらないから、統計上は、人々はまったく豊になっていないことになるのだ。(p103,シャブ中は生産性を低下させない)

まず、偉大な発明があったとしても、人は労働時間を半分に減らすことはないと思う。これまでも、たとえば人間の移動手段は進歩して、半日あればどこでも行けるようになった。

通信手段も飛脚の時代とは比較にならないw

でも、それによって仕事時間は減ったか。減らない。仕事の処理速度が上がれば、それを前提とした経済になるからだ。

この本でさんざん著者も云っているように、他より抜きんでたい欲望を人が持っているかぎり、企業も当然、他社より儲けたいと思うわけで、偉大な発明が仕事の処理能力を上げたとしても、結局それに応じて仕事量を増やすだろう。

そんな具合で、いろいろと考えるきっかけにはなる本である。同意も反発も含めて、読んでみる価値はあったとは思う。自明と思っていたことも、他にもやりようがあるんじゃないかと議論することは重要であろう。

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