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2015年3月24日 (火)

サイレント・ゲーム

Imagescaysnhqd  サイレント・ゲーム

 リチャード・ノース・パタースン:著

 新潮社 ,2003 

読後感:☆☆☆

 【辣腕弁護士トニーのもとに持ち込まれた依頼は、高校時代の親友でスポーツ競技のライバルでもあったサムの弁護だった。いまやレイクシティ高校の教頭となっているサムは、教え子の女子高生マーシーと関係を持ったあげく、殺害した疑いをかけられていたのだ。トニーの脳裡に甦ったのは、彼自身が28年前に恋人アリスンを殺したとして無実の罪を着せられ、苦悩した悪夢のような日々。苦い思いを噛みしめつつ、故郷の町に舞い戻ったトニーは、絶対不利な裁判を水際立った弁護で強引に評決不能へと持ち込もうとする。だが、裁判が進行するにつれ、パンドラの匣のように封印された彼自身の過去の悪夢が、事件に重くのしかかってくるのだった。すべての真相を知りながら沈黙をつらぬく殺人者の正体とは?かくして、真実をめぐって静かなるゲームが繰り広げられることになった―。法廷サスペンスの鬼才が心血を注いだ、追憶と懊悩の人間ドラマ。 】

 

 読んでから数年経たいま、備忘録として記す。本をすでに手放しているため記憶違いもあるかもしれない。

 さて、罪の段階をかなりまえに読んでいて良かったので、これも読んでみた。

 いい。

 謎解きの面白さ云々ではなく、人間を描くのが上手いと思う。物語の比重は、弁護士の主人公と被告人の友人との“複雑な友情”にある。

 地元に残り、田舎では考えうる限りの“堅実な幸せ”を手にした学生時代のhero、それが被告人である。教師となり教頭にまで出世し、同級生の女性と結婚し、高望みしなければ充分満たされているといっていいはずの人生だろう。

 

 しかし、彼には”越えられない”友人がいた。かつて共にsportsで汗を流し、自他共に認めるrivalであった男。地元に残らず都会に出ていき、大統領弾劾裁判でも辣腕をふるい“全国的に有名となった売れっ子弁護士”、それが主人公である。

 

 そいつが現れなければ、周りに並ぶ者がないheroであった被告人サムのまえに、学問優秀sports万能な将来の弁護士、トニーが現れてしまったのである。しかもこの男は、サムがひそかに惚れていた女子と付き合っているとなれば、人間心理としてどうなるであろうか。

 

 高校卒業とともに都会へ出たトニーに対して、地元に残ったサム。勝てないまま、文字通り手の届かないところへ行ってしまった友への複雑な感情を抱えたまま、同級生との結婚生活を慎ましく続けてきたこの男の心中を察しよう。忘れたくても、不意にその名を聞くこともあるほどの存在になってしまったかつての“rival”トニー。

 この男の中にも同じくらいの比重で、自分は存在しているか? 自分にとって価値あるものと信じて疑わないあらゆるものを、同じ熱意で競争してくれない男を、“rival”と云えるのか? 俺が俺がと、ガツガツしない男。なのに全てを手にしてしまう男。

 トニーもまた、彼らとの日々を思い出す。しかし、それは失った彼女の記憶。殺された彼女の無念。そして最愛の彼女を殺めた犯人として疑われた暗い日々の記憶としてである。トニーにとってのサムと、サムにとってのトニーでは、その存在の占めている比重が違う。

 そんな男に自分の弁護をしてもらうはめになるとは。トニーに弁護の依頼をしたのは、妻だった(はず)。

 サムは今度こそ決着をつけようとしたのだろう。辣腕弁護士となった“友”の前で、法廷で自らの弁護をしてみせようというのだ。

 事件の真相は? 而して、あの暗黒の日々の決着は如何に?

 ともに青春時代を生き、犯人と疑われていた自分を励まし、支えてくれもした女性から打ち明けられた衝撃の事実。

 “rival”が遂げる最期の決着。人間心理というものを深く考えずにはいられない物語である。

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