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2015年4月20日 (月)

第75回 皐月賞観戦記

 久しぶりの中山競馬場での観戦である。やはり競馬の醍醐味は現場で勝負するに限る。途中から弱い雨も降り出した。これが各馬、各騎手にどう影響するだろうかなどといろいろ考え、自分の馬券戦略を錬るのである。馬券の買い方にはその人となりが反映されるのである。どの馬を選ぶかからはじまり、単勝、複勝、または連勝系で勝負をするかという、券種の選択も迫られるのだ。そこに人物が出てしまうのである! 高い配当を狙うのなら、当然、人気のない(oddsの低い)馬を狙わなければならない。人気になる馬というのはそれなりの理由がある。血統が良い。近走の成績が良い。腕の良い騎手が乗っているなどなど。しかし、そういう馬をいくら買っても配当に妙味がない。それに、raceの展開によっては勝ちきれないこともあるのだから、こういう皆が本命視している馬を買い続けていると己の資金が底をつくはめになるのだ。だから勝ちたい(高い配当を得たい)ために穴狙いになっていくのである。

 オレがこの皐月賞で狙った馬は1枠1番のブライトエンブレムであった。ネオユニヴァース産駒で前走の弥生賞を2着しているのだが、その時の勝ち馬がこの皐月賞で1番人気になっていたサトノクラウンである。着差0.2秒である。これだけの差で、しかも上がり3ハロン(1ハロンは200m)がmember最速35.2秒である! 曲がり通過順も1コーナーから4コーナーまで10番手で通過していてコンマ2秒差の2着。最終コーナーから8頭抜き去っての惜敗であったのである! それだけの馬が、この皐月賞でなんと6番人気である。1番人気のサトノクラウンに惜しい負け方だった馬があまりに軽視されていたのである。

 穴党大歓喜! これでodds10倍以上つくなら美味しすぎるというもの。こうなったら下手に連勝式馬券など買う必要はない。相手がsetでなければ外してしまう馬券である。当然的中ならば儲けものであるが、軸が定まっているのに相手が付いてきてくれないために泪を飲んだことがどれほどあったか! ここは欲を抑えてただ一頭の馬に全身全霊の想いを込めるべき!

 狙いは定まった。単勝(1着の馬を当てる)一点勝負である。もちろん1番ブライトエンブレムだ。騎手は田辺裕信。この男、人気薄の時こそ強い。おそらく後ろに控えて距離ロスのない内を通ってくるだろう、そして大外強襲、一気に他馬をごぼう抜きの図がオレの脳裏に展開した。2番人気のリアルスティールもたしかに怖い。これは皐月賞優勝馬を近年よく輩出するスプリングステークスを前走つかってきて、キタサンブラック(馬主はサブちゃん)に着差0秒の2着している馬である。ここ数年、このスプリングステークスを勝った馬と、共同通信杯を勝った馬が、1年交代で皐月賞を勝っていることも注目である。嫌なdataである。しかしなんといっても前走をこの皐月賞と同じ courseを走っていて妙味もある1番ブライトエンブレムでオレの腹は決まった。

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 当日の中山競馬場は、やはり座れる席などなかった。開門ダッシュ組がほとんどの席を占めたのだろう。しかしraceが始まればどうせ立ち見である。オレはさっさと馬券を買ってゴール前に陣取った。あとはただraceの始まるのを待つのみである。下手にpaddockなど見に行ってしまえば、自分の場所に戻ってはこれなくなる。それくらい人が多い。競馬人気が落ちているとはいってもさすがG1raceである。

 そして始まった。G1の時間である。ホースマンたちの夢、クラッシック1冠目のここを目指して使われてきた馬たちの晴れ舞台である。

 ここで競馬場の巨大ターフビジョンにG1の気分を煽る映像がながれる! すでにこの時点でオレの涙腺は緩んでいる。走る為に生まれてきた馬たち。やがて母のもとをはなれ....やめろ!泣く!

 さらにミルコ・デムーロである。小屋での輪乗りからgateへ向かうときに、ちょっとドゥラメンテが行きたがらない素振りを見せたのだが、デムーロが馬の首筋を撫でながら、なにか話しかけているようにターフビジョンに映し出されたのだった。さらにオレの涙腺は緩んだ。もはや買った馬券のことなどどうでもよい気がしてきていた。ただ、素晴らしいraceを!、である。さらにさらにである。観客の誰かが「怪我しないで廻ってこいよ」なんて声を張り上げているではないか! これ以上泣かせるな!

 そしてgateは開かれた。raceは是非とも動画で確認していただきたい。いまは便利な時代で、Internetですぐに映像が見られる。オレの夢、ブライトエンブレムは中団からの競馬となった。前走指して届かなかったことにやはり学んで、無理のない位置につけてきた。直線に望みをかけるが前を捉えきれないようであった。もはや無理かとは思いながらも絶叫させてもらった。

 た~~~~~~~~なべ~~~~~~!!!差せ~~~~~~~!!!!!!!!

 が、差したのは別の馬であった。2番のドゥラメンテである。馬場の真ん中を突いて抜けてきた。その末脚(すえあし)や見事であった。リアルスティールがハナ(先頭)に立ち、逃げたクラリティスカイ、キタサンブラックと競り合っているところを、次元の違う末脚ですっ飛んできたのである。

 しびれた。そしてrace映像がターフビジョンに映し出されて、後方から一気に抜け出してきたドゥラメンテの走りと、デムーロ騎手がどうやって馬群をさばいて彼を勝たせたのかを見た瞬間、オレの身体に電流のようなものが走った。「おおおおおおおう」というどよめきが起きた。競馬場が揺れたような気さえした。それくらいの勝ち方であった。結果的には、デムーロ騎手はこの「斜行」が裁定委員の逆鱗にふれたらしく、数週間騎乗停止処分となったようであるが。

 あの斜行がなかったら他の馬にも勝てる見込みはあったのか? こればっかりは分からない。場合によては他馬を巻き込んでの事故にもなりかねない騎乗ではあるだろう。だが、日本人騎手もこういう競り合いが世界基準としてあたりまえということは知っておいたほうがいい気がするし、JRAも裁定基準は世界基準に合わせないと、日本のホースマンたちの夢である、凱旋門賞制覇など遥か遠くのままになってしまわないだろうかと思ったしだいである。

 兎に角、人は凄いものを見てしまったときは震えるのだ。震える日本ダービーを期待している。


  

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